落語:噺家さんを取り巻く不思議な世界
世の中には数多の芸術があり、
その表現者も数多いるのだが、
落語:噺家さんほど直接的な批評、
批判に晒されている存在は、
他にないのでは?と思う。
例えば、ライブの後にジャズミュージシャンに向かって、
①「今日のあのスタンダード曲は、◯◯年の誰々の演奏の方が良かった。」とか、
②「あのアドリブソロは長過ぎた。もっと短い方がすっきりして良い。」とか、
③「あの曲のあの部分の音出しは、大きすぎて耳障りだった。」とか、
④「あそこで、ミスタッチしたでしょう?」とか、
面と向かって誰かが言っているのは、聞いたことがない。
心の中で個人的に思ったり、
ライブを聴きに行った仲間同士で、
そんな事を言い合ったりすることは当然あるけれども、
それを、直接本人にと言うことは、まず考えられない。
演奏のあとに、プロの音楽家に向かって、
素人の聴衆(個人)が、
当人の芸の「レベル」を面と向かって「評価」したり、
他と比べて、上下ランク付けたりなんて、絶対しない。
誰かがそんな事を言ったり、したりするのを、
聞いた事見た事も無い。
ところが、落語:噺家さんの世界では、
「お客様」と呼ばれる人たちが、
日常的に、直接、落語:噺家さんにダメ出しをする。
①「今日演った◯◯(有名な古典落語の演目)は、
◯◯(名人と呼ばれる人の名前)のが最高だ。」
②「あの夫婦の下りは、たっぷりやり過ぎだ。
もっとサラッとやらないと、あの夫婦の良さが伝わらない。」
③「あそこは、大きな声で言うようなところじゃない。
もっと、しんみりと語らないとダメだ。」
④「あの台詞のところで、かんだだろう?」
と、まぁ、こういった感じのことを、
噺家さんご本人に向かって、普通にズケズケと言うのである。
耳に痛い事「も」言ってくれる人が、本当の「お客様」?
「芸人は客が育てる。」なんて言葉も聞くけれども。
師匠でも、プロでもない「お客様」の意見を
噺家さん達はどう聞いている(聞いていない?)のだろう?
まぁ、「お客様」が何か言うのは、
落語:噺家さんに対する愛情や期待あってこそ、の、
ご意見、批評、批判なのだろうから、
それはそれとして。
「お客様」のご意見、批評、批判をきちんと受け入れ、
改善に結びつけ、質を上げて行く。
これはなにも、落語に限ったことではないし、
どんな仕事にでも、
(製造業の営業に携わる私のような仕事に当てはめても、)
基本的なことだ。
それでも、
噺家さんだって生身の人間なのだから、
完全上から目線で滔々とダメ出しされたり、
考えに考えて自分なりに工夫をした噺に、
(笑っているお客様も結構いたのに)
「あれは、いらない」なんて言い切られたら、
やっぱり傷つくと思う。
そういう機会が落語:噺家さんは、
たぶん、とっても多い。
私だって知らず知らずのうちに、
余計な感想を言って噺家さんを
傷付けているのかもしれない。
晒される芸、とでも言うのだろうか。
そうやって、長い間、傷つきながら、
磨き上げらてきたのが落語:噺家さんなのかもしれない。
逞しくも、不思議な世界だ。
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